頭にこびりついていた寿司屋「つく田」

寿司が好きだ.日本酒に抜群に合う.どうしても行きたい寿司屋として,「鮨 青木」(銀座),「亀喜寿司」(塩釜),そして,「つく田」(唐津)が頭にこびりついていた.「亀喜寿司」は夏に訪ねた.銀座で寿司は,なんとなく取っておきたい.「つく田」に訪ねた.

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前日の昼,「つく田」に夕六時からの予約を入れ,シュウマイ弁当と缶ビール,缶ハイボールの袋をぶらさげて早朝発の新幹線に,意気揚々と乗る.味付け支那チクをつまみに缶をあけて,シュウマイをほおばり,睡魔に落ちる.程よい空腹を伴って博多に降り立ち,秀ちゃんラーメンでとんこつラーメンを腹の片隅に置いてくる.替え玉は我慢.こくがありながら,香りはシャープで,味が澄んだ,東京で食べる豚骨ラーメンとは違う,本場の味を実感する.ホテルにチェックインして,鉄道で唐津へ向かう.道中,右手に玄界灘が厚ぼったくたゆり,旨そうな魚どもが脳の中で透けて泳いでゆく.虹の松原を過ぎる頃には,夢の中にいた.唐津駅へ降り立つ.駅前の地図で,唐津焼の販売所を見つけ,「つく田」とは異なる南側へ歩を進めた.手ぶらから,唐津焼のコーヒーカップを入れた袋をぶらさげる姿に変わり,線路を跨いで北に向かう.

川沿いを唐津城を見ながらぶらぶらする.ハゼを釣る親子や少年たちと話す.トビウオをつかった「あごだし」が一般的らしいが,正月の雑煮の出汁(だし)を取るためにハゼを釣っていた.釣果もほどほどにあった.唐津城手前で左に折れて,海辺をぷらぷらする.海を望むベンチに腰掛け,おだやかな海棚とたゆやかな島を望んで,410円に値上がりしたハイライト・メンソールをくゆらす.婆ちゃんが前をゆったりゆったり,えんこらえんこら,過ぎて行く.日が傾き,「つく田」を目指す.あっという間に暗くなった頃,日曜のためか暗い商店街に佇む「つく田」 に着いた.

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寿司を教えてくれた銀座「きよ田」で修行した主人が,下町「佃島」くらいの心は持ちながら,と名の由来を説明してくれた「つく田」.九州では一般的という銀杏(いちょう)のまな板,ヒバのカウンタ,佐渡島の地酒「北雪」を供に,次々飛び出す魚より貝が好きなんだと実感させてくれる全て一線を越えた刺身つまみ,塩うにやふぐを使った酒肴,握りに移ってからはテンポよく小振りながら酢加減絶妙に炊き上げた米の上にはけで醤油を塗ったとろけるネタを供し,小生もテンポよく口に摘(つま)む.至極の 18,900円.

「冷酒(れいしゅ)で」とは言わず「冷(ひ)やで」と試したが,断りも無く,常温ではなく,冷蔵庫から一升瓶を出したのは減点である.

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