頭にこびりついていたおでん屋「蛸長」
寒空の下,冬の風を頬に感じながら,JR湖西線・比叡山坂本駅から琵琶湖方面を望む.
10数年前,NHKで,昭和の名店のような白黒画面の再放送をしていて,京都の鴨川沿いにある,蛸おでんが絶品の店が映っていた記憶が,鮮明に残っている.ネットが普及し,後日調べたところ,その店が,店名からして「蛸長」であることは疑いようがない.ようやっと訪ねた.
いずれも大振りの,海老芋,大根,豆腐,葱鮪,蛸,湯葉を,山椒をふった青ネギや辛子を口休めに,程よく浸かった熱燗を,ずしっり重い錫(すず)の”ちろり”から”ぐい呑み”に移して延々と唇にあてがった.隣席の客が連呼する『ここの蛸は天下無双』に頷き,『開店120年じゃ京都じゃ老舗とは言わない』と,足を悪くしたと言う先代を継いだ息子のしゃきっとした喋りが身にしみた.
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