潤う飲み屋(湘南の酒場)

印象に残った飲み屋.酒は瓶で買ってつまみを作って飲むのが安上がりだがたまには奮発して外で.特に日本酒は同じ銘柄でも保存状態で雲泥の差になるし,ひととの出会いもある.後片付けがいらないことに甘えず,去り際を意識して飲みたいものだ.表は,「店名(ジャンル/立地/最後に訪れた年)」を示している.
<注>2002~2006に巡ったお気に入りの飲み屋への思いがベースです.以後,再訪や心に残る酒場との出会いをした場合に加筆していきます.

<湘南>
湘南麦酒蔵(地ビール/香川/2006, 2007)
えぼし(地物海産/茅ヶ崎/2006)
久昇(酒亭/藤沢/2004)
樽寿司(寿司/鵠沼/2005)
紅膳居(中国家庭料理/平塚/2006)
はまよし(鰻/藤沢/2006, 2008)
藤よし(天婦羅/藤沢/2006)
ジンギスカン(ジンギスカン/茅ヶ崎/2006, 2008)
あおき(酒亭/辻堂/2006) 2008年に閉店→後に入った尾田も2016年に閉店
尾田(酒亭/辻堂/2009)
正栄丸(相模地魚/辻堂/2006)
串堂(串揚げ/辻堂/2009)
白扇酒造(居酒屋/大船/2009)
うしお(相模地魚/久里浜/2009)

/☆Go Back☆/



・湘南麦酒蔵
(地ビール 茅ヶ崎市香川7-10-7 予算2500円)

地ビール湘南ビールの製造元の直営店.昼から一杯飲んで,自転車で家に帰るのが私にとっての至上の贅沢だ.瓶で買って飲むより,やはり店で飲んだ方が数段うまく感じる.ただ車以外の交通の便が悪いのが遠方からの人には難点.

ビールはビター,リーベ,ルビーの3種がある.なかでも湘南の夕日をイメージして作られたというルビーがおすすめ.さらっとして飲みやすい中にもコクがある.お通しの麦,粒マスタードがうまいソーセージ盛り合わせなど,定番つまみも流石ビールによく合う.

2008秋,秋も半ば,気持ちよく風をきって湘南の山田舎・香川の湘南ビールへ.地ビールの生に,モルトをつまみ,マルゲリータをほおばり,読書する.いつ来ても味が安定している.常時,同じ味,つまりリピータが道中想像してくる期待した味,を提供出来るのがプロの飲食店の絶対条件,若いスタッフ,安定しない客層にも関わらず,それをキープしているのはよい.
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・えぼし
(地物海産 茅ヶ崎市南湖5-17-56 予算3500円)

駅から遠く,遠方からのアクセスは大変だが,湘南を代表する有名店.えぼしとは,茅ヶ崎を地元とするサザンオールスターズの「チャコの海岸物語」の歌詞にも出てくるえぼし岩のこと.茅ヶ崎海岸に浮かぶ実物は確かに烏帽子に見える.店には茅ヶ崎海岸の花火大会の帰りに寄るとよいだろう.

店内は手書きのメニューがぎっしりで目移りしてしまう.湘南名産生シラスとシラスの天ぷらを食べたら,刺身でも,煮魚でも,とれたてのうまい魚を食らう.魚が口で踊れば,自然と酒も進む.

赤い魚,茅ヶ崎駅前にも支店がある.週末は混んでいるが,席数が多いので待たされない.
※茅ヶ崎駅前店の「赤い魚」は2008年暮れに閉店していることを確認
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・久昇
(酒亭 藤沢市鵠沼橘1-17-2 藤沢駅徒歩5分 予算3500円)

鯨が食べられ,締めの親子丼で有名な居酒屋.おから,よもぎ入りの卵焼き,たらの芽の天ぷら,他150種以上の季節のおつまみはどれも真心こもったやさしい味がする.日本酒も八海山,浦霞など有名どころを一通り揃えている.私にとっては高校までの地元の同窓会の定番店.とは言え,その同窓会で,賭けに買って奢ってもらいう契約のもと,たくさん払わせちゃろうと無理して飲み過ぎ,注文し過ぎ,出禁!!?に!!!
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・樽寿司
(寿司 藤沢市本鵠沼4-7-10 予算4000円)

辻堂,茅ヶ崎,腰越,江ノ島など湘南産・三崎産の魚や貝を始め,新鮮な魚を使った握りを堪能できる.夏に饗する岩牡蠣はほほがとける.酒肴に供する生しらすがたまらない.ポン酢,生姜とついつい2杯ほどがっついてしまう.

日本酒は死神など,珍しい酒(十四代の札もかかっているが,注文しても必ず置いていない)も含め,品揃えが豊富だ.穀物と酒は,事実そうなのだが,合わない先入観がこびりついている.しかし,寿司だけは別で,日本酒のみだからでもひょいひょいと口に運んで何ら違和感がないから流石だなぁ.藤沢駅前にも支店(藤沢市鵠沼石上1-7-1)がある.
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・紅膳居
(中国家庭料理 平塚市諏訪町12-12 平塚駅より神奈中バス江南高校前徒歩2分 予算3000円)

中国北東部(山東,吉林省)の家庭料理,中国家常菜.さっぱりしながら,しっかり塩味と独特の深いコクが特徴の醤油味に山椒の「麻」と唐辛子の「辣」がピリッと引き締める味わいがある.2人の女性店員さんはきびきびと注文をさばき,アットホームな心持ちで食べられる.

瓶だし10年ものの紹興酒,一杯500円を飲む.食卓には「ニラたっぷりジュージュー鉄板餃子」「プリプリエビ入り韮菜万頭」「エビカニたっぷりのぶっとい春巻」「ジャガイモとニンジンのシャッキリ炒め豆芋」が並ぶ.その一皿一皿の完成度が高く,量の多いこと.注文時に「もう結構あるよ,食べてから注文すればよろしいのでは」と一声かけてくれるのが嬉しい.
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・はまよし
(鰻 藤沢市南藤沢2-1-1 藤沢駅徒歩4分 予算3000円)

正午,暖簾をくぐる.柳川ができるか確認して「あります」と返事があるとよしっと思う.柳川で日本酒を飲むのがなんともよいのだ.ごぼうの口当たり,まとめ役の卵,どじょうは臭みを抜かれ尚主役を主張する.ダシのきいた汁まで一滴残らず平らげる.辛口の日本酒は昼の胃によくしみる.

頃合いを見計らってうな丼が運ばれてくる.鰻のタレと焼きは,個々人好みがあるだろうが,この店のは私にずばり合う.米の粒を感じながら箸の動きが止まらない.おひたしとカブの漬け物は,常に味が一定で恐れ入る.食後にほうじ茶を出してくれるのも嬉しい心配りだ.

2008年も3, 4度訪ねた.年中か?元気がないときに,どうも鰻/どじょう,地に足ついた味を食べたくなるのだ.当店,老年の娘・母親子や,還暦超えカップルと言った2人組来店が大半なようだ.カウンタに1席のみ空いていて,カップルが席待ちのところに,私が1人来店した場合,来店順を重視して,頑として,席につかせない.同じシチュエーションでも,神田まつやなどは,席があいたら,店員がうまくさばいて席につかせてくれる.対応がころころ変わらず,店固有のルールとして定着していればどちらでもよい.
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・藤よし
(天婦羅 藤沢市鵠沼石上1-5-15 藤沢駅徒歩4分 予算1500円(昼))

昼定食を侮るなかれ.京都出身の気さくな主人が,その日お勧めの,旬の野菜や海鮮を一品ずつ揚げて供してくれる.うまい,うまいからこそ手間かけて天婦羅にする意味がある.口の中でうま味が弾ける.

目の前で次に口に運ぶタネを主人が揚げている,その光景を見ながら日本を傾ける贅沢.つまみとして食べるなら塩,米と食べるならつゆにつけて食べるのが宜しい,なんて気にせず,ただ熱いうちに口に運ぶことだけを貫く.昼は正一合でやめとくのも肝要(?)そして,天婦羅と日本酒を楽しみ,どれもぶれのない,小鉢,漬け物,みそ汁でご飯をさらりと食べて店を後にする.

お腹に余裕があれば,お好みで「きす」「はぜ」「めごち」の白身食べ比べなんてオツであろう.私の誕生年1980年,創業の名店.
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・ジンギスカン
(ジンギスカン 茅ヶ崎市幸町23-16 予算2500円)

茅ヶ崎駅南口を出て歩いて3分のこのラム肉焼屋は,店名もずばりジンギスカン!! 晩年茅ヶ崎に越してきた開高健が贔屓にした.ロマネコンティ2本を,ビール屋の御負けグラスで,『無礼と言う礼儀もあるわな』と嘯きつつ飲ったと言う.(サライ2005.9号)

こっちがこの店に礼を言いたいのは懐への優しさだ.ラム肉正一皿250円,キャベツ半切250円,ニンニク10切程100円,大ジョッキ500円.酒はホッピ(黒/白)もあるが,小瓶であり,豪快に生でむちむちの歯応えのラム肉を流し込みたい.

肉が好き?魚が好き?かと問われれば,酒の肴としても,単の味の深さ調理の多様さにしても,魚と答える.しかし,魚にはないが数月に一度『肉』を無性に食べたくなる衝動が上がってくる.その欲のはけ口としてこの上ない.

一人でも入りやすいが,18:00には会社帰りや家族連れで満席になる.予約は一人からでもできるようだ.ずっと17:30開店と思っていたら,17:00からあいていた.間違って覚えていたのか,開店が変更になったのか,どちらでもよいこと.

2008も結局3, 4回は訪ねた.結局,定期的にやってくる『肉』を無性に食べたくなる衝動はおさえられない.注文は,ジン(ジンギスカン)×2, ホルモン×1, レバー×1, ホッピーダブル+焼酎中身ダブルで1500円程度が定番コースになっている.
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・あおき
(酒亭 藤沢市辻堂1-2-12 予算2000円)

辻堂駅至近で,会社帰りにフラッと一杯にもってこいの酒亭だ.ホワイトボードにその日仕入れた魚が並び,刺身で食す.カツオ,しめ鯖,鯵.醤油が2種類用意されており,「刺身のうまさ」は「醤油のうまさ」ということを実感する.

酒は,焼酎と日本酒がバランスよく揃う.奥さんが丁寧に注いでくれる.楯野川なぞをきりっといただく.棚には最近出回っている「佐藤」のボトルキープが目立つ.

ご主人は,リタイアして念願の本店を開いたそうだが,勤め時代も時分のつまみを作っていたとかで,いかの揚げ物など,仕事をした一品の出来も見事だ.客が少なく話が弾んでくると,寿司を振る舞ってくれたりする.なお,ご主人はゴルフ好きで,ゴルフされる方は一発で話に花が咲く.チーピンしにくいドライバの選び方と,打ち方を教えてもらった.
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・尾田
(酒亭 藤沢市辻堂1-2-12 予算2000円)

あおきの後に入った店.店主は町田の調理師学校で10数年教えていた先生,店員はその生徒で,あおきの夫婦とは直接関係がないそう.だけど日本酒や焼酎の酒揃えは,あおきに似ており,取引先の酒屋は引き継いだのだろう.地元なのに,神奈川の日本酒は「丹沢山」と,茅ヶ崎・熊澤酒造の「天青」しか知らなかったが,海老名の変わったネーミングの日本酒「恵・いづみ橋」を置いている.さらりと飲みやすく好みの酒だった.

酒肴は,あおき同様,毎日店主が市場に仕入れに行く魚が中心.訪ねた1月5日には,正月サービスで刺身をサービスしてくれたが,新鮮そのもの.醤油もやはりうまく,納得だった.好物の蛤の酒蒸しも,身がしまり濃厚,汁はうま味たっぷりで満足であった.店主・店員は仕事をしっかりしつつも客との会話を楽しみ,客層もそれを目当てと言う面が見えるので,会社帰りふらっと寄るのにぴったり.
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・正栄丸
(相模地魚 藤沢市辻堂1-2-11 予算2500円)

あおきの隣のビルに位置し,2003年から江ノ島,腰越,小田原など,相模の地元料理を供している.好物の生シラスがやはり地の王道と感じる.ビール(キリンとエビス黒生)にも日本酒にも焼酎にも合う抜群の肴である.焼酎は宮崎の芋,「杜氏潤平」「心水」を勧めている.日本酒は聞き慣れない銘柄がおすすめに並び,価格も500〜700円と背伸びをしておらず,ダブルで嬉しい.

料理は沖縄料理に力を入れているようで,本格ごーやちゃんぷるを食べた.水気が十分抜けた大降りな豆腐がごろごろと平皿に陣取り,合間からハム,ゴーヤ,卵が覗く.沖縄名産という島唐辛子(泡盛や焼酎に沖縄産の乳首みたいな小降りな唐辛子を浸けたもの)をかけて味を引き締めて食べた.締めは,おにぎりや,焼きおにぎり茶漬け,茶そばなど顔がほころぶラインナップである.

店内はカウンタと簡単な仕切りで区切られた半個室が数個あり,照明も落とし目のため,隠れ家的である.
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・串堂
(串揚げ 藤沢市辻堂2-8-28 予算2500円)

小奇麗な小料理屋を思わせる佇まいである.串をつけるソースやおろしポン酢も,相席者共通ではなく,各人別に,皿で出される.が,串は上品ではなく,オオブリで,しかも安い.レバーの刺身は新鮮で,チャーハンはパラパラの米粒が口で踊り,と,サイドメニューも脇を固めている.

マスターが柔術家であり,客に湘南ベルマーレなど,スポーツマンが多く,会話も弾む!ありふれていながら,こだわりをもった酒のラインナップに加え,オリジナルの焼酎のオロナミンC割りが秀一で,なにからなにまで,バランスが取れている,貴重な地元の一軒である.
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・白扇酒造
(居酒屋 神奈川県鎌倉市大船1-5-7 予算2000円)

私の中で,野毛の武蔵屋と並び,神奈川の居酒屋の2大巨頭である.「客層」「店員の所作」「酒」「つまみ」「店内の雰囲気」,欠点はなく,見事に調和している.

引き戸を開けると,老紳士の一人客が大半を占め,焼酎ボトルをちびりちびりと飲んでいる.落ち着く光景だなぁ.私は冷酒を頼む.ここの冷酒350円は,癖がなく,さらりとしていながら,ふくよかな味があり,後味はいたって爽やかな,実によく出来た冷酒である.きっと,常温や燗にすると,味がこわれてしまう,まさに冷酒のための酒なんだろう.お通しは,それだけで,もう一品の量・質を讃え,〆鯖や,貝の刺身を頼めば,自ずと冷酒は2杯, 3杯, 4杯と進むのである.

親子経営で,後継者もばっちり.こういう居酒屋は,私が歳を重ねるのに沿って,長く長く続いて欲しいものだ.
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・うしお
(相模地元料理 横須賀市久里浜 予算1500円)

常に常連でごった返している京急久里浜駅前の立ち飲み屋は,うまい魚を軽くつまんで,常連の会話を楽しんで,さっと帰るのが気分転換によい.引き戸を開けると,おばちゃんが,カウンター越に「おかえんなさい」と迎えてくれる.さっと出してくれる100円の突き出しは,雲呑や煮物など,日替わりながら,じみ深く,これだけでビールがすんなりと空く.刺身3点盛りで600円,トリガイ,マグロ,〆サバ...醤油を噛み締め,身を味わい,焼酎のお湯割りがするすると空く.

常連の会話は,ストリップから釣り,日常会話,時事会話など,豊富且つ,酒場慣れた口調で飛び交い,実に洒脱である.
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