バレンタインAKB48

【推しメン:北原理英】
AKB48ではチームBの北原理英が気に入った.うなぎ犬に似ていると言われる風貌ながら,厚ぼったい唇は好感で,滑舌は悪いながら,アイドルらしいキャピキャピしたアニメ声ではなく,耳に響く独特の低温の声色を持っている.

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【当選までの考察】
昨年末から,あまりに露出が多く,チャンネルを回していれば,必ずと言っていいほど目にしたAKB48を,生で見たくなり,秋葉原の劇場チケットの応募を繰り返した.レギュラーメンバーは,チームA,チームK,チームBが各16名で公演は平日に集中し,対して土日は研究生がステージに立っている.せっかくならレギュラーメンバーが見たいのと,丁度,仕事が忙しくなく,時間に融通が利く時期だったので,10~15回ほど応募した.そして,倍率が高そうな印象のバレンタインデーの2/14のチームB公演に当選した.AKB48劇場チケットセンターのみで募集しており,一般枠は,115名である.ネットで目にしたところでは,数万人が一度に応募するそうだから,倍率は100倍を超える.100倍というのは全く誇張に聞こえないほど,今のAKB48の勢いがある.ヤングジャンプ,マガジン,サンデー,BOMBまで,巻頭グラビアはAKB48のメンバーが席巻しているのだから.寧ろ,1000倍と言われても,そんなに疑わないほどだろう.だから,10~15回の応募での当選は,なかなか幸運だったと言えるはずだ.一般枠の応募は公演の2日前の0:00~20:00である.当選する前の回までは,のんびり昼に投票していたが,今回は0:00に試みた.実際は,同じ事を考えた無数のファンとかち合い,サーバへのアクセスが途絶え,根気よく接続して,0:45にようやっと申し込みが完了した.当選した場合は,公演日前日の15:00頃にメール連絡と,AKB48劇場チケットセンターのマイページが更新されるようだが,実際は13:16に連絡が来た.当選番号は405だから,募集と同時に申し込みを試みた事を思い出せば,これはきっと,405番目に応募したことを指す.そして今まで当選しなかった事と,0:00頃にアクセスが集中した事を考えると,早くに応募した方が,当選の割当が多いということなのだろう.きっと.

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【劇場について】
劇場は,秋葉原駅から徒歩ですぐのドン・キホーテが入ったビルの最上階の8階にある.劇場内は撮影禁止なので,入り口のみの撮影である.開場の約1時間前の,17:30頃に撮ったのでヒトはまばらであるが,開場間際では,1公演250名定員の,まさに,その250名でこのフロアがごったがえした.そして,ほぼ男,断然,10人中9人以上男.そして,ほぼ20~30代の男たち.但し予想と違ったのは,見るからにいかにもという格好,そう!ピンクやスカイブルーのハッピを着たヒトがいなかったことだけである.客の顔立ちというか,雰囲気は,言葉で表現するのは難しいけれど,アイドルおたくという言葉がぴったりだった.公演前に,対照的という表現がぴったりな,『神田まつやで,年配客に溶け込んで,私の中の定番メニューである熱燗に焼き鳥,もりそばをすすった』,その後,『メイドカフェのめいどりーみんで,モスコミュールを2杯飲んだ』.メイドカフェの客は,でれっとしていて,普段は根暗なんだろうな,と思う印象の20~30代の男が,「萌え萌えきゅんきゅん」「ギガントかわゆす〜」なんて,メイドに乗せられて,外野から見たら大振りに空振りしながら弾けている.対してアイドルオタクは,スマートで一歩引いて物事を見る冷たさがありながら,鉄の仲間意識で半歩前進している,そんな印象だ.はい,よく分かりません.尚,しっかり,ちゃっかり「推しメン」の北原理英が画面に映ったタイミングで,劇場の入り口に向かって,ロビーの写真を撮った.

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【入場まで】
写真付きの身分証明書を,受付の眼鏡をかけた,細身で色白な,綺麗に真ん中で分けた長髪の男に見せ,チケット代の3,000円を渡すと,リストバンドとチケットをもらえる.ピンクのリストバンドは紙製で,切らないように,と忠告を受けるが,重ね着をしていると,上着の袖口がひっかかっていかにもきれそうで,気が気ではない.階下のドン・キホーテ秋葉原5階にある48's shopで,ショッキングピンク色の派手なリストバンドをちらつかせると,狭き250人の当選に漏れた男たちからの視線があり,少し優越感を味わえた.スマートなアイドルオタクたちは,時間に律儀で,騒ぎもせずに,というより力を温存して,開場時間前にはきっちりと,ロビーをびっしりと埋め尽くし,係員のマイクアナウンスに従い,チケットの番号毎に列を作って並んでいた.ファンのニックネームを交えた小声の会話がそこかしから聞こえてくる.少し興奮と言う名の,鳥肌を覚え,愉しい.私の番号は179なので,250人定員だから,後ろの方なのかなと指示を待つと,ほぼ開場の定刻に,『30番台が第一列』と大声のアナウンスがあり,「オー」と一気に歓声があがる.「静」を作れるから,騒ぎの際の「動」が際立つ事に感心しながら,アナウンスを待つと,恐らくランダムに,xx番台の方は入場して下さい,と声が次々にかかる.入場直前まで席は明かさないサプライズ感はなかなか素敵であるが,この日,170番台は結局最後の方に呼ばれたのだった.

【パフォーマンス】
確かに近い.ステージと客席が近い.私は,右後ろ隅の一番端,4人だけのお立ち台席のすぐ前で,客席より1段高くなっているところに立って観た.真ん中に柱が2本あり,大概の席では視界の妨げになる建築構造だが,柱の内側には鏡が付いていて,正面とは違った,後ろ姿など,思わぬ角度で彼女たちを見ることができた.曲目は,5th Stage Songs「シアターの女神」チームBで,「ロマンスかくれんぼ」「勇気のハンマー」「隕石の確率」「愛のストリッパー」「シアターの女神」「初恋よ こんにちは」「嵐の夜には」「キャンディー」「ロッカールームボーイ」「夜風の仕業」「100メートルコンビニ」「好き 好き 好き」「サヨナラのカナシバリ」「潮風の招待状」「オネストマン」「チームB推し」「たちの紙飛行機」,そして,バレンタインデーということで,特別に国生さゆりの「バレンタイン・キッス」の計18曲.全曲の作詞をしている秋元康が,美空ひばりの「川の流れのように」も作詞しているのが,なんとも,面白く,歌詞を響かせる.「バレンタイン・キッス」は,派生ユニットの渡り廊下走り隊7もカバーしており,同ユニットのチームBメンバーである,小森美果,平嶋夏海,渡辺麻友が休演だったため,別の場所で活動していたに違いない,と想像した.正直,少なくともチームBでは,AKB48のメンバー個々の歌はそれほどうまくないと感じた.アップテンポな曲を,16人全員で歌っている分には,補いあい,勢いがあり,聴けるけれど,少人数でバラード調だと,身近にいるちょっとうまいヒトのカラオケと大差ない.特に合間に挟むトークでは,「うーん」「えー」と,喋り手を見る目が一気に冷める,しかし,喋っている当人はひと呼吸のつもりのつなぎ言葉を連発しているメンバーが多く,内容もかみ合っていないので,意外と訓練されていないのだな,と感じた.総選挙という名のファン投票で上位だった,北原理英と河西智美は,テレビでよく見かけることもあり,――じゃないとテレビで使われない訳だが――,話にキレがあり,安定していた.北原理英と河西智美はじめ,恐らく16人中14人は,ロングヘアだったので,正直見分けがつかなかったけれど,小林香菜と竹内美宥(みゆ)は肩程度のセミロング以下で,こういう分かりやすい個性はいいな,と思った次第.中でも,チームBエースの渡辺麻友の代役で演技を披露してくれた15歳の竹内美宥は,目の煌(きら)めきが,期待していたアイドル像そのもので,可愛らしく,エースの代役で目立つポジションで歌っていたとは言え,一番目立っていた.そして,ファンたちのオ(ヲ)タ芸のパワーは流石の一言で,一番声を張っていた薄いグレーのパーカーの男が,私の隣の隣で河西智美を「ともともともともともおみちゃん」や,「あ〜,よっしゃいくぞ〜 タイガー,ファイヤー,サイバー,ファイバー,ダイバー,バイバー,ジャージャー あ〜,もぅいっちょいくぞ〜 虎,火,人造,繊維,海女,振動,化繊飛除去 チャペ,アペ,カラ,キナ,ララ,トゥスケ,ミョーホントゥスケ」など,アンコールのかけ声含め,客を引っ張る存在だったので,釣られて少しだけ,私も声を出し,手を振ってみた.

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【終幕】
外に出ると,どっさりと雪が降っていた.面白かった,けど,1度でいいかな,という思い.

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【番外】
バレンタインデーだったので,メンバーがチョコを配っていた.推しメンの北原理英の列に並んだ.北原理英は,他のメンバーに比べてダントツで列に並ぶファンが多い人気ぶりで,私は,2011年のバレンタインデーとして,一ファンとして一番最後に握手をし,赤いハートのテープを張った紙袋をもらった.「変わった声をしていますね」と声をかけたら,目を見て「あ〜.声が低いんです」という反応だった.手は大きく,指は長く,肌触りはドライだった.紙袋の中身は,チームAの前田亜美のカードと,市販のチョコが3個だった.

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